趣味のはなし 後編

つづきをば。

 

ルークはいつのまにかささきのなかで、精神的な恋人のような存在になってて、ずっと描き直すことで彼の美しさを損なって愛せなくなるんじゃないかっていう葛藤があったりもした。

 

今までいたドールはどれも素体から顔を書いていたから、ささきがすべて描いたようなもので、自分の子供ののような存在にどこかで思っていたから、彼は特別だったんだな。でもやっぱり、美しくあってほしいし、ささきが顔を描きたいって思ったからやることにした。

 

それをやるには、単純に顔を描くだけではささきの気が済まない。身体もきれいにしたいから、テンションゴムをはずしてそれぞれをシンナーできれいに落とす必要がある。

これがまた70センチ級になるとえらい作業で。

今までの子らはアクションドールなら顔、体のペイントをすべて1日で、40センチ級の子は体を洗浄、ペイント、顔を書いて1日、トップコートをかけて乾燥を1日で二日程度。

他のかたがどうしているかはしらないけれど、大分作業がはやいほうなんじゃないかと思う。

 

それがどうだ、今回のルークはさっきまでシンナーで体と顔のペイントを落とすので精一杯だった。普通に面積が広くて手間がかかっただけではない。

彼のテンションゴムをはずし、解体するのは容易かった。5分程度。だけどその行為はえらく背徳的だったことが問題だった。

恋人ほどに大切な彼がモノになってゆく。頭が、手が、脚が、身体が解れてゆく。胸につっかかりを感じながら、一つ一つのバラバラになったパーツが全部美しくて、正直エロさを感じていたし、ひどく興奮した。わしゃ吉良吉影か。

 

身体のパーツ一つ一つをなぞって塗装をおとしてゆく。汚れや塗装が落ちて元の色がどんどん露になってなんだこれ、めちゃくちゃエロいじゃないか。

海外製のキャストドールは会社によって身体の作りや形が全然違うのだけど、ほんとルークは美しいんだよ。背中のライン、腹筋、太もも、膝、指先全部。

窓を開けてマスクを装着してても、シンナーでくらくらになった。休憩を挟んで三時間ぐらいかかった。

シンナーに浸り、バラバラになった彼の身体をぬるま湯で洗っているとき、そのスベスベとした感触にまた興奮した。ってか今日はめっちゃ興奮した。中学生かよ。

 

一通り洗い終わったあと丁寧にタオルで拭いて、バラバラだった彼を、パーツが欠けていないかチェックするために並べてみた。

 

ついさっきまでささきの部屋に居た彼が、そこにある。彼は彼ではなくなっていたけど、その姿もまた美しくて。

ペイントとかは今日はやる気になれなかった。今の美しさを、もう少しだけ楽しみたいとすら思えた。

どうだろう、ささきの寝床の隣に、彼だったものは表情なく並べられている。この非現実的状況に、言い様のないエロさを感じてしまうのは、いけないことなんだろうかね。